本作の構造的な妙味は、昭和・平成・令和という激動の3つの時代が「ラジオ英語講座」と「ジャズ」、そして「和菓子と回転焼き」というモチーフで途切れず結ばれている点にあります。それぞれのヒロインの人生は決して平坦ではなく、戦争による死別、親子の断絶、そして長い年月を経た和解という過酷な運命を辿りました。
第一部「安子編」では、岡山市の和菓子処「たちばな」の看板娘・橘安子(上白石萌音)が、地元名家である雉真家の長男・稔(松村北斗)と身分違いの恋を実らせます。しかし、召集された稔の戦死により、娘のるいを一人で育てる過酷な試練が訪れます。義弟・勇(村上虹郎)の献身的な愛や、激動の大阪・岡山を巡る運命の歯車が、後の母娘の引き裂かれへと繋がっていきました。
第二部「るい編」では、母親への複雑な愛憎を抱え大阪へ出たるい(深津絵里)が、ジャズトランペッターの「ジョー」こと大月錠一郎(オダギリジョー)と出会います。失意のどん底にあったジョーを支え、京都で回転焼き屋を営む決断を下す過程は、傷ついた魂の再生を描く濃密なヒューマンドラマとなりました。
第三部「ひなた編」は、るいと錠一郎の娘・ひなた(川栄李奈)が主人公です。時代劇愛好が高じて条映太秦映画村へ就職し、大部屋俳優の五十嵐文四郎(本郷奏多)との切ない恋や、ハリウッド映画の通訳アシスタントへの挑戦を経て、やがてアメリカから帰国した老年の安子(森山良子)と対面する感動のフィナーレへと雪崩れ込みました。