映画界広しといえど、叶井俊太郎ほど波乱万丈という言葉が似合う男はいなかった。数々のヒット作を世に送り出す一方で、巨額の負債を抱え、設立した配給会社「トルネード・フィルム」の破産など、幾度もの栄光と挫折を経験。それでも彼は飄々としていた。「借金なんて死にやしない」と言わんばかりの不敵な笑みは、業界内外で愛される彼の代名詞でもあった。
破滅型に見えて、作品を見る目は冷徹なまでに研ぎ澄まされていた。ヒットの方程式に頼らず、自分が「面白い」「ヤバい」と感じたものだけに全額を賭けるギャンブラー的センス。その危うい魅力に、倉田真由美をはじめ多くのクリエイターが惹きつけられたのは至極当然だったのかもしれない。