伝統の重圧と闘い続けていた寺島しのぶの人生に決定的な転機をもたらしたのが、2007年の結婚でした。パートナーとなったのは、フランス人アートディレクターのローラン・グナスィア(Laurent Ghnassia)氏です。
ローラン氏は、パリや東京を拠点に国際的な広告キャンペーンやアートイベント、映画祭のプロデュースを手掛けてきたクリエイティブの第一人者。ふたりの出会いは2006年の映画祭であり、歌舞伎界の格式や「人間国宝の娘」という肩書を一切気にせず、ひとりの独立した女性・表現者として彼女に接したことが、寺島しのぶの頑なだった心を大きく解きほぐしました。
閉鎖的になりがちな梨園の周辺において、外国人男性との結婚は当初大きな驚きをもって迎えられました。しかし、ローラン氏は日本の美意識や歌舞伎の芸術性を深くリスペクトし、やがて父・菊五郎とも酒を酌み交わす良好な関係を築き上げます。伝統的な「家」の論理に囚われない風通しの良いパートナーシップは、寺島しのぶに表現者としての新たな自由と安定をもたらしました。