ポキ丼の根底にある「ポキ(Poke)」とは、ハワイ語で「短く切る」「スライスする」「細かく刻む」という意味を持つ言葉です。現地では新鮮な生魚を一口大のサイコロ状にカットし、香味野菜や調味料と和えた料理全般を指します。これをご飯の上にのせたスタイルが「ポキ丼(ポキボウル)」です。
日本国内では「ポキ丼」と「ポケ丼」という2つの表記が混在していますが、ハワイ語の本来の発音記号に従うと「ポケ(POH-keh)」がより原音に近くなります。一方で、英語圏を経由して世界中に広まる過程で「ポキ(POH-kee)」という発音と表記が一般化し、日本でも双方が広く使われるようになりました。基本的にはどちらの呼称を用いても同じ料理を指しています。
その歴史は古く、西洋人との接触以前の古代ハワイにまで遡ります。当時の先住民たちは、沿岸で獲れた新鮮な小魚やカツオを指や石器で刻み、天然の海塩(パアカイ)、乾燥させた海藻(リム)、ローストしたククイナッツの実(イナムナ)などを混ぜ合わせて保存食や日常食として食していました。
19世紀後半以降、サトウキビプランテーションの労働者として日本から多くの移民がハワイへ渡ると、日本の食文化である「醤油」と「ごま油」が現地に持ち込まれます。これが伝統的なポキと劇的な融合を果たし、現代私たちになじみ深い「醤油ポキ(Shoyu Poke)」の原型が誕生しました。ポキ丼は、ポリネシアの伝統文化と日系移民の食文化が美しく結実した歴史的ハイブリッド料理といえます。