昭和30年代(1955〜1964年)に最盛期を極めたロバのパン屋が、なぜ消えたのか。ネットのQ&Aサイトなどでは「チェーン本部が破産した」「衛生基準を満たせなくなった」といった憶測が散見されますが、実態はより構造的な社会変革にありました。
最大の転換点は、1960年代に急速に進展した日本のモータリゼーション(車社会化)です。舗装道路が急速に整備され、一般乗用車やトラックの交通量が爆発的に増加するなかで、のんびりと歩くロバや馬の荷車は深刻な交通渋滞の原因と見なされるようになりました。さらに1960年に全面改正された道路交通法の施行や各自治体による道路使用許可の厳格化に伴い、排泄物による衛生上の苦情や交通阻害を理由に、動物を用いた移動販売は公道から事実上締め出されていったのです。
加えて、高度経済成長期に伴う飼育コストの高騰や、全国各地にスーパーマーケットやコンビニエンスストアが進出した流通革命が追い討ちをかけました。その結果、各チェーン加盟店はロバのパン 移動販売車 軽トラへの転換を余儀なくされ、生き残りを図ったものの、時代の急速なスピード感のなかでその姿を急速に減らしていきました。