「シャープペンシル」という名称が日本で定着した背景には、日本の近代産業史における偉大な発明家が深く関わっています。その人物こそ、総合家電メーカーであるシャープ株式会社の創業者・早川徳次(はやかわ とくじ)氏です。
1915年(大正4年)、金属加工職人だった早川徳次氏は、それまで輸入されていた壊れやすい繰出鉛筆を劇的に改良し、金属製の繰出式筆記具を開発しました。この発明品は「早川式繰出鉛筆」として特許を取得し、後に「決して芯を削る必要のない鉛筆」という意味を込めて「エバー・レディ・シャープ・ペンシル(Ever-Ready Sharp Pencil)」と名付けられて国内外で大ヒットを記録しました。
その後、1923年の関東大震災で早川氏の工場は甚大な被害を受け、筆記具事業の権利を譲渡して大阪へと拠点を移すことになります。そこで新たにラジオや家電製品の開発に乗り出す際、かつて世界的な大成功を収めた原点の製品にあやかり、社名を「早川金属工業研究所」から現在の「シャープ株式会社」へと発展させました。身近な文房具の呼び名と日本のトップ電機メーカーの名前が同じなのは、決して偶然ではなく、歴史的な発明の軌跡そのものなのです。