なぜこれほど凄惨なストーリーが、現代では微笑ましい兄弟愛の物語へと様変わりしたのでしょうか。その歴史的転換点となったのが、1933年に公開されたウォルト・ディズニー制作の短編アニメーション映画『三匹の子ぶた(Silly Symphony: Three Little Pigs)』です。
この歴史的アニメーションにおいて、上の2匹には「ファイファー・ピッグ(フルート奏者)」「フィドラー・ピッグ(バイオリン奏者)」、レンガの家を建てる末っ子には「プラクティカル・ピッグ(実直な働き手)」という明確な名前と個性が与えられました。そして、ディズニーの演出によって「藁と木の家を壊された2匹が命からがらレンガの家へ逃げ込み、3匹で協力して煙突から侵入したオオカミを撃退する」という、現代人が知るプロットへと書き換えられたのです。
オオカミの最後についても、熱湯で煮殺して食べるのではなく、「お尻を大火傷して煙突から飛び出し、山の彼方へ逃げ去る」というマイルドな描写に変更されました。劇中歌『狼なんかこわくない(Who's Afraid of the Big Bad Wolf?)』は、世界恐慌のどん底にあったアメリカ国民を力づける大ヒットナンバーとなり、このディズニー版の翻案が世界的なスタンダードとして上書きされていくことになります。
以下の比較表は、民話としての原話、ディズニー版、そして現在日本で親しまれている普及版絵本における決定的な構造の違いを整理したものです。