炭酸煎餅の発祥を語る上で、株式会社三津森本舗の存在は外せない。明治の末期、有馬の泉源から湧き出る炭酸水を利用して初代・三津繁松氏が創案したのがすべての始まりだ。かつて太閤・豊臣秀吉も愛したこの名泉の恵みが、職人の手によって滋味あふれる銘菓へと昇華した。
本店に足を踏み入れると、木造建築の重厚な佇まいとともに、甘く香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。昔ながらの丸型焼き型を用い、職人が一枚一枚の焼き色と厚みを手先の感覚だけで調整していく。機械化が進んだ現在でも、手焼きの技術は厳格に継承されている。
口に含むと、驚くほど軽やか。余計な油分や添加物を一切使わないからこそ、噛み締めるほどに素朴な甘みが広がり、スッと喉へ消えていく。どこか懐かしく、何度でも戻りたくなる味。元祖としての誇りが、1枚の薄い円盤の中にぎっしりと詰まっている。