半世紀以上にわたって愛される野比のび太という像は、歴代のキャスト陣が注ぎ込んだ情熱によって育まれてきました。黎明期である1973年の日本テレビ版では太田淑子氏が担当し、テレビ朝日版の初期には堀絢子氏が代役を務めるなどの変遷を経ています。
その後、1979年から2005年までの26年間にわたり魂を吹き込んだのが小原乃梨子氏です。小原氏は生前のインタビューで「のび太は情けないけれど、絶対に下品にしてはいけない。根底に品の良さと温かさを持たせることを意識していた」と述懐しています。弱音を吐きながらもどこか憎めず、涙もろくて友達思いなのび太像は、小原氏の細やかな表現力によって完成しました。
そして2005年のリニューアル以降、20年以上もの長期にわたり担当しているのが大原めぐみ氏です。大原氏は、現代の子供たちにも共感できるよう、より身近で等身大の少年の息遣いを大切に演じ続けています。声優交代の荒波を乗り越え、世代を超えて「のび太の声」が受け継がれていること自体、このキャラクターの普遍的な魅力を物語っています。
ネット上のファンダムでは、今なお「さようなら、ドラえもん」での決死の奮闘(ドラえもんを安心して未来へ帰すため、ボロボロになりながらジャイアンに一人で立ち向かった場面)や、「おばあちゃんのおもいで」で見せた純粋な愛情が語り継がれています。「情けないけれど、いざという時に逃げない」というギャップが、読者の心を強く打つのです。