旅人の木(学名:Ravenala madagascariensis)の最大の代名詞といえば、硬い木質のさやがパカッと割れた瞬間に現れる旅人の木 青い種です。塗料を塗ったかのような鮮烈なコバルトブルーを目にした人の多くは、「着色されたフェイクではないか」と疑いを抱きます。しかし、これは植物が自ら生み出した天然のカラーリングです。
植物分類学上、この青い皮膜は種子そのものではなく、種子を包み込む「仮種皮(アルル)」と呼ばれる組織にあたります。自然界において青色の色素(アントシアニンなど)をここまで純粋に発現させる植物は極めて稀です。原産地であるマダガスカル島において、旅人の木は現地固有のクロキツネザルやオオコウモリなどの視覚を刺激し、遠くからでも目立たせて果実を食べさせ、種子を遠方へ運んでもらう(種子散布)ために、独自の進化を遂げたと分析されています。
日本国内では、亜熱帯気候に属する沖縄や奄美大島、小笠原諸島などで街路樹や公園樹として導入され、沖縄 自生の群生に近い環境下でダイナミックに開花・結実しています。沖縄の強い紫外線と年間を通じた温暖な気候が、あの分厚い木質の果実(さや)を成熟させ、乾燥に伴って内圧で裂開したときに、息をのむようなサファイアブルーの種子を覗かせるのです。