浸透圧の現象は、私たちの身の回りの暮らしの中に数多く潜んでいます。その代表的な事例を見てみましょう。
① ナメクジに塩をかけるとなぜ縮むのか?
ナメクジの体表は薄く柔らかい粘膜(半透膜)で覆われており、体の約85%以上が水分で構成されています。体表に高濃度の塩を振りかけると、ナメクジの外側が一気に極めて高い塩分濃度になります。すると、体内の水分が「外の濃い塩分を薄めよう」として一気に外側へと染み出してしまいます。つまり、塩によって溶けているのではなく、体内から急激に脱水された結果として体が縮小しているのです。
② 漬物やサラダでキュウリから水が出る原理
野菜の浅漬けを作る際、塩もみをしてしばらく置くと大量の水分がボウルに溜まります。これも全く同じ仕組みです。野菜の植物細胞を取り囲む細胞膜の外側に塩分が存在することで、細胞内の水分が浸透圧によって外側へ引き出され、細胞のハリ(膨圧)が失われてしんなりとした食感に変化します。
③ 砂糖漬けやジャムが長期間腐らない理由
塩だけでなく、高濃度の砂糖でも強烈な浸透圧が生じます。ジャムや羊羹(ようかん)のように糖分を限界まで高めた食品には、細菌やカビが付着しても、微生物の細胞内から水分が外へ吸い出されてしまいます。その結果、微生物は水分不足で活動・繁殖できなくなり、防腐剤を使わなくても長期保存が可能になります。