ドラマ『家政婦のミタ』において、視聴者に強烈なトラウマと好奇心を同時に植え付けた「脱衣未遂」の場面が登場するのは、第2話(2011年10月19日放送)です。ネット上で断片的な情報だけを目にした人々が「松嶋菜々子の過激な濡れ場があったのではないか」と誤認しがちですが、実態はそれとは180度異なる極めてシリアスな心理劇でした。
物語の舞台となる阿須田家は、母・凪子の突然の事故死(実際は不倫に絶望した入水自殺)によって瓦解しかけていた家庭です。父親の恵一(長谷川博己)は頼りなく、4人の子どもたちはそれぞれ深刻な問題を抱えていました。その阿須田家へ派遣されてきたのが、派遣所の所長から「頼まれた仕事は完璧にこなすが、感情を持たないロボットのようだ」と評される三田灯(松嶋菜々子)でした。
第2話では、母親を失った現実を受け止めきれず荒れる長男・翔(中川大志)が物語の中心となります。バスケ部のキャプテンを外され、家庭内でも苛立ちを募らせていた翔は、何を命じても眉ひとつ動かさずに完璧に遂行する三田の存在に強い不快感を抱きます。食事の配膳や片付けを完璧にこなす三田に対し、翔は反抗的な態度でこう詰め寄りました。
「お前、本当に言われたことなら何でもやるのかよ?」「だったら、今ここで服を脱いでみろよ!」
思春期の少年が大人を試すために口にした、悪意と虚勢に満ちた挑発でした。一般的な大人であれば怒鳴りつけるか、あるいは嘲笑して相手にしない場面です。しかし、三田灯の口から返ってきたのは、あの低く平坦な決まり文句でした。
「承知しました」
返答と同時に、三田は一切の躊躇を見せることなくエプロンを外し、着ていた地味なシャツのボタンへ手をかけます。ひとつ、ふたつと外され、胸元が露わになっていく現実を前に、虚勢を張っていた翔やその場にいた兄弟たちは青ざめ、恐怖に震え上がりました。冗談が通じない狂気、人間の羞恥心を完全に喪失した機械のような動作に圧倒された翔が「やめろ! もういい、脱ぐな!」と悲鳴に近い叫び声を上げたことで、三田は淡々とボタンを留め直し、何事もなかったかのように家事へ戻ったのです。