ハリー・ポッターという巨大な看板は、小野賢章にとって最大の栄誉であると同時に、若手俳優としては「何を演じてもハリーのイメージがついて回る」という重い足枷になりかねないものでした。しかし彼は、シリーズ完結と前後してアニメーション作品のオーディションへ果敢に挑戦し、自らの実力でその壁を打ち破りました。
その最大の契機となったのが、2012年から放送されたテレビアニメ『黒子のバスケ』の主人公・黒子テツヤ役です。感情をあまり表に出さず、影の薄い少年でありながら内面に強烈な闘志を秘めた黒子のキャラクター造形は、小野がハリー役で培った「繊細な声の抑制と内面表現」と完璧に合致。この作品の大ヒットにより、彼は「元子役の吹き替えタレント」ではなく、現代アニメ界のトップ声優としての地位を確立しました。
その後も、以下のような幅広いジャンルで代表作を次々と獲得しています。
- 『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』:主人公ジョルノ・ジョバァーナ役。気品と冷徹な覚悟を併せ持つ難役を圧倒的な説得力で好演。
- 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』:主人公ハサウェイ・ノア役。富野由悠季監督の描く複雑な青年の苦悩を人間臭く体現。
- 『SPY×FAMILY』:ユーリ・ブライア役。姉への狂信的な愛情と秘密警察としての冷酷さを行き来するコミカルかつシリアスな演技で新境地を開拓。
2026年現在も、劇場アニメやナレーション、舞台出演など多方面で第一線の活躍を続けており、ハリー・ポッターで培った10年間の下地が、彼の揺るぎない表現力の骨格となっていることは疑いようがありません。