厚生労働省の「人口動態統計」および出入国在留管理庁の在留外国人統計を分析すると、日本におけるベトナム国籍の在留者は約50万人規模に達し、国籍別でも中国に次ぐ存在感を示しています。これに伴い、従来の農村部を対象とした仲介業者経由のお見合いだけでなく、技能実習生や特定技能、IT高度人材として来日した女性と日本人男性との恋愛結婚が日常的な風景となりました。
ところが、婚姻件数の増加と歩調を合わせるように、家庭裁判所の家事相談や行政書士事務所には離婚や別居にまつわる相談が殺到しています。国際結婚全体の離婚率は一般に約50%前後と高水準で推移していますが、日越カップルにおいても、スピード婚を選択した層を中心に婚姻後3年以内の破綻リスクが顕著に現れています。当事者が口を揃える「後悔の理由」を深掘りすると、3つの構造的な要因が浮かび上がってきます。
第1の要因は、「経済的扶養に対する認識のズレ」です。後述する仕送り問題とも直結しますが、日本人側が「共働きで二人で豊かになろう」と考えているのに対し、現地出身の妻側は「豊かな日本の夫が、貧しい母国の家族全員を支えるのが当然」と捉えているケースが目立ちます。この期待値の不一致が、入籍直後から深刻な不信感を生み出します。
第2の要因は、「深刻なコミュニケーション不全と感情の孤立」です。お見合いから数カ月で入籍した場合、日本語能力試験(JLPT)のN4〜N5(初級レベル)程度しか話せないケースも珍しくありません。日常の買い物程度は問題なくとも、感情の機微や将来設計、トラブル発生時の深い対話が成り立たず、夫側は「都合のいい送金マシーン」、妻側は「言葉の通じない異国での孤立者」として精神的に摩耗していきます。
第3の要因は、「母国コミュニティの強固さと外部の介入」です。在日ベトナム人のSNSグループ(FacebookやZalo)は極めて結束が強く、生活の知恵が共有される一方で、「夫から生活費をいくらもらっているか」「実家にいくら送金させているか」といった情報が常に比較されます。周囲の煽りを受けて夫への要求がエスカレートし、家庭内が疑心暗鬼に陥る事例が後を絶ちません。