観客をただの傍観者にとどめず、祭りの主役へと変貌させるのが「跳人(ハネト)」の存在です。「観光客でも本当にその場で飛び入り参加できるのか」という疑問を持つ人は多いですが、結論から言えば跳人衣装レンタル参加方法を正しく把握し、正規の正装ルールを守っていれば、誰でも運行の隊列に加わることができます。
青森ねぶた祭には「ハネト衣装(正装)を着用していれば、自由に参加してよい」という極めてオープンな伝統が息づいています。事前の参加登録やチケット購入は原則不要です。ただし、近年は運行の安全管理や過密防止の観点から、一部の大型ねぶた運行団体において「事前登録制」や「参加人数の上限設定」を試験的に導入する動きもみられます。飛び入り参加を歓迎している自由参加枠の団体と、関係者・登録者優先の団体があるため、当日の案内板や実行委員会のアナウンスを確認することが重要です。
跳人として祭りに加わるための必須条件は「完全な正装」です。私服の上に浴衣の羽織を着るだけといった軽装や、仮装での参加は固く禁じられています。正式な跳人衣装の基本構成は以下の通りです。
- 白地を基調とした浴衣:裾を膝上までたくし上げて着用する
- おこし(腰巻き):赤またはピンクの鮮やかな布地
- たすき:赤や黄色の帯紐を背中で交差させて結ぶ
- しごき(腰紐):腰回りを引き締める装飾帯
- 花笠:色鮮やかな花で飾られた菅笠(頭上に着用)
- 白足袋・草履:脱げにくいよう「豆絞り」の紐で足に固定する
旅行者が自前で一式を用意するのは現実的ではないため、青森駅周辺やワ・ラッセ近隣の特設着付け処、地元の呉服店が展開するレンタルサービス(着付け込みで約5,000円〜8,000円が相場)を活用するのが最も合理的です。荷物預かりサービスを併設している店舗を選ぶと、手ぶらで運行終了まで踊り狂うことができます。
そして、跳人たちの士気を極限まで高めるのがラッセラー掛け声の由来と経緯です。「ラッセラー、ラッセラー、ラッセラッセラッセラー」という独特のリフレインは、一説には江戸時代にねぶたの運行資材や蝋燭を家々から募る際に叫んだ「出せ、出せ、蝋燭出せ」が訛ったものとも言われています。また、厄災を払い豊作を願う「ねむり流し(精霊送り)」の民俗信仰と結びつき、苛酷な冬を前に夏の生命力を爆発させる呪術的な意味合いも帯びています。囃子方のリズムに合わせ、片足で2回ずつステップを踏みながら跳躍するシンプルな動きですが、1時間も跳び続ければ凄まじい運動量となり、得も言われぬトランス感と一体感を味わえます。