失明に至る急性感染症以上に静かに、そして不可逆的に進行するのが角膜内皮細胞減少の危険な理由です。角膜は外側から「上皮」「ボーマン膜」「実質」「デスメ膜」「内皮」の5層構造になっています。一番内側にある内皮細胞は、角膜内部の水分を前房水へ汲み出して透明性を維持するポンプの役割を一手に担っています。
最大の問題は、この角膜内皮細胞が人間の体内で二度と細胞分裂・再生をしない組織であるという事実です。健康な成人の眼球には1平方ミリメートルあたり約2,500〜3,000個の内皮細胞が存在しますが、長時間の装用や就寝による酸欠によって細胞が死滅すると、欠損部を埋めるために周囲の生き残った細胞が巨大化して面積を広げるしかありません。
この細胞密度が1,000個/mm²以下に割り込むと、将来白内障などの眼科手術が安全に行えなくなるリスクが高まり、さらに500個/mm²を下回ると角膜の透明性を維持できず、常に角膜が水ぶくれを起こして濁る「水疱性角膜症」へと移行します。これは角膜移植以外に治す術がありません。
「昼休みの仮眠程度なら影響はないだろう」と高を括る人が多いものの、カラコンつけたまま昼寝の後遺症は想像以上に過酷です。わずか30分の浅い眠りであっても、瞬きによる涙の交換(ポンピング作用)が途絶えるため、レンズは瞬く間に角膜表面の水分を吸い上げ、強力な陰圧で眼球に吸着します。眼を開けた瞬間にレンズが角膜上皮を道連れにして引き剥がし、深刻な角膜びらんを引き起こす引き金となるのです。