一口にスリッポンといっても、その造形とキャラクターはモデルによって驚くほど異なる。原点にして究極のマスターピースと呼ぶべきが、1936年に誕生したG.H. Bass(ジーエイチバス)の「Weejuns(ウィージャンズ)」だ。甲のサドルに1セント硬貨を差し込む学生の流行からその名がついたペニーローファー(コインローファー)は、軽快なマッケイ製法とミニマルなカッティングで、アメカジのあらゆるボトムスを懐深く受け止める。
対照的に、圧倒的な重厚感とエレガンスを主張するのがAlden(オールデン)に代表されるタッセルローファーだ。往年のハリウッド俳優による特注から始まったこの優美なデザインは、太めのベイカーパンツや色褪せたチノの裾から覗くだけで、装い全体に貴族的な気品を宿らせる。とりわけホーウィン社の最高峰シェルコードバンが放つ妖艶な艶は、無骨なアウターと対比させた瞬間に唯一無二の存在感を放つ。