「公式として $\frac{\sqrt{3}}{2}a$ を丸暗記したものの、テスト本番で分母が2だったか4だったか混乱してしまった」という声は、進学塾の指導現場でも毎年のように聞かれます。なぜ、整数の辺を持つ美しい正三角形から、無理数である $\sqrt{3}$ が生じるのでしょうか。その背景には、数学の金字塔である三平方の定理(ピタゴラスの定理)が密接に関わっています。
証明の手順は驚くほど明快です。正三角形の頂点から底辺に向かって垂直な直線(垂線)を下ろします。正三角形は左右対称(線対称)な図形であるため、この垂線は底辺をちょうど真っ二つに二等分します。このとき現れるのが、30度60度90度の直角三角形です。
この直角三角形の3つの辺に注目してみましょう。
- 斜辺:もとの正三角形の1辺なので長さは $a$
- 底辺:1辺を二等分したため長さは $\frac{a}{2}$
- 垂線(高さ):求めたい高さ $h$
直角三角形において「底辺の2乗 + 高さの2乗 = 斜辺の2乗」が成り立つ三平方の定理より、以下の等式が成立します。
$$\left(\frac{a}{2}\right)^2 + h^2 = a^2$$
$$\frac{a^2}{4} + h^2 = a^2$$
$$h^2 = a^2 - \frac{a^2}{4} = \frac{3}{4}a^2$$
長さである $h$ は正の数($h > 0$)であるため、両辺の平方根を取ることで次の結果が得られます。
$$h = \sqrt{\frac{3}{4}a^2} = \frac{\sqrt{3}}{2}a$$
これが、正三角形なぜルート3が出るのか理由の数学的正体です。「1から $\frac{1}{4}$ を引いた残りの $\frac{3}{4}$ に対し、ルートを被せるから分子に $\sqrt{3}$ が残る」という構造を一度でも自分の手で紙に書いて確かめておけば、公式をど忘れすることは二度となくなります。
この比率を一般化したものが、中学校の数学で習う「辺の比1対2対ルート3($1 : 2 : \sqrt{3}$)」という有名な関係性です。高校数学の三角関数においても、この図形的性質はそのまま三角比sin60度($\sin 60^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2}$)の定義そのものとして直結しています。