アニメ『キテレツ大百科』を語る上で避けて通れないのが、シリーズの代名詞となった『はじめてのチュウ』です。甲高いアヒルのような愛らしい歌声から、放送当時は「本物の幼児が歌っているのか」「電子音による合成音声か」と大きな話題を呼びました。
歌唱クレジットに記載された「あんしんパパ」の正体は、同曲の作詞・作曲・編曲を手掛けたミュージシャンの実川俊晴(じつかわ としはる)氏本人です。
当時の制作インタビューや関係者の証言によると、レコーディング時に「テープの回転速度を半分に落として歌を録音し、通常速度で再生する」というアナログピッチシフターの手法が用いられました。実川氏が意図的に低音かつスローテンポで歌ったトラックを倍速再生することで、あの独特で愛らしいヘリウムボイスのようなボーカルが生み出されたのです。現代のボーカロイドやボイスチェンジャーの先駆けとも言える、先駆的な音響実験でした。
本作は当初、数カ月限定のタイアップ予定でしたが、視聴者からの凄まじい反響とリクエストを受け、オープニング曲への昇格や度重なるエンディングへの再登板を果たし、結果として番組終了時まで幾度も流れる伝説のアンセムとなりました。