インターネット上の言説や一般的な紹介において、「宇野亜喜良=昭和レトロな少女イラストを描く人」という一面的な捉え方がされることが少なくありません。しかし、これは彼のキャリアのほんの一郭を切り取った誤解に過ぎません。
日宣美(日本宣伝美術会)の時代、宇野は横尾忠則や和田誠とともに、日本のグラフィックデザインの黎明期を切り拓いた生粋のデザイナーでした。タイポグラフィ(文字デザイン)の美しさや画面構成の計算され尽くしたグリッド感覚は、徹底したデザイン理論に裏打ちされています。
さらに、1970年代以降は人形作家・四谷シモンらとの交流を通じて人形制作や舞台美術、映画監督、エッセイストとしても類まれな才能を発揮しました。宇野にとって「イラストレーション」とは、単なる挿絵ではなく、文学、演劇、立体造形、広告を総合的に連結するためのメディア(媒体)であり、その本質はルネサンス期の万能芸術家に近い多面性を持っています。