長崎市船大工町。風情ある石畳の街並みに佇む福砂屋 長崎本店は、寛永元年創業(1624年)という気の遠くなるような歴史を背負っている。中国との交易で賑わう長崎の地で、初代がポルトガル人から直接製法を学んだことからすべてが始まった。
特筆すべきは、株式会社福砂屋が今なお貫き通す「別立て」による手わざ製法だ。一般的な製菓工場で見られるような機械による一括混合を、彼らは頑なに拒む。一人の職人が最初から最後まで責任を持ち、卵を白身と黄身に分け、まず白身だけを専用の泡立て器で完璧なメレンゲへと仕立てていく。気泡の立ち具合、その日の気温や湿度、手の平に伝わる重み。職人は五感をフル回転させ、生地と対話する。機械には決して真似できない、命を吹き込む作業がそこにある。