映画俳優のようなビジュアルを誇っていたトランプですが、その青年期は決して温室育ちの平穏な日々ではありませんでした。1946年6月14日、ニューヨーク市クイーンズで生まれたドナルドは、幼少期から極めて自己主張が強く、気性の荒い子供として知られていました。自著『トランプ自伝(The Art of the Deal)』のなかでも、小学校2年生のときに「音楽教師が生意気だったため殴り倒して目の周りにアザを作らせた」という衝撃的な回想を書き残しています。
手に負えない息子のエネルギーを持て余した両親が下した決断が、13歳での全寮制ミリタリースクール「ニューヨーク・ミリタリー・アカデミー(NYMA)」への強制入学でした。当時のアカデミーは、元軍人の指導教官による体罰や厳格なヒエラルキーが支配する過酷な環境でした。ベッドのシーツの張り方から靴の磨き上げ方、分単位の規律に至るまで徹底的な服従を強いられる日常のなかで、トランプは反抗するのではなく、そのシステムを逆手に取って頂点に立つ道を選びます。
運動能力に恵まれていたトランプは、野球チームのエースでありファーストとして活躍。当時のチームメイトや関係者の証言によると、「メジャーリーグのフィラデルフィア・フィリーズのスカウトが視察に来ていた」とされるほどの腕前でした。最終学年を迎える頃には、生徒たちを統率するキャプテン(中隊長)へ昇格。規律を生き抜く過程で彼が学んだのは、「強者だけが尊敬を集め、弱者は徹底的に淘汰される」という非情な力学でした。