うさぎの胃腸が止まる背景には、単一のトラブルだけでなく、複数の要因が複雑に絡み合っています。臨床現場で頻発する主な発症原因を紐解きます。
第一に挙げられるのが換毛期の毛球症(トリコベゾアール)です。うさぎは猫のように自力で毛玉を吐き出すことが解剖学的に不可能です。春や秋の大換毛期に、毛繕いによって大量の抜け毛を飲み込んでしまうと、胃の中で消化途中の牧草繊維と毛が絡み合い、フェルト状の巨大な塊を形成します。これが胃の出口(幽門部)や十二指腸を塞ぎ、物理的な閉塞や機能低下を招きます。
第二に食生活における繊維質不足と炭水化物過多です。市販の嗜好性の高いペレットやおやつ(ドライフルーツやクッキー状のスナック)を与えすぎると、咀嚼回数が減って胃腸の運動性が落ちます。低繊維・高デンプンの食事は盲腸内のpHを狂わせ、正常な発酵を担う有益菌を死滅させます。
第三に環境変化による強烈な心理的ストレスです。うさぎの自律神経は繊細を極めます。近隣の工事騒音、ペットホテルへの宿泊、同居動物の存在、ケージの配置換えだけでなく、近年の異常気象に伴う激しい寒暖差や台風襲来時の急激な気圧低下は、胃腸の蠕動運動を司る副交感神経の働きを一気に抑制します。
第四に見落とされがちなのが不正咬合をはじめとする基礎疾患の痛みです。奥歯(臼歯)が異常に伸びて舌や頬の粘膜に突き刺さると、咀嚼時の激痛から食べることを拒否し始めます。ほかにも尿路結石や子宮疾患、関節炎などによる慢性痛が交感神経を緊張させ、二次的に消化管うっ滞を誘発する症例が非常に多く見られます。