土俵上での行司の役割は、単に勝ち負けを決定するだけではない。巨漢がぶつかり合う激しい取組のなかで、絶妙な間合いを取りながら「はっけよい、のこった」と声を張り上げる立ち回りは、日本の伝統芸能としても極めて高い完成度を誇る。
200キロ近い力士が倒れ込んでくる土俵際で、巻き込まれずに間一髪で身を躙りつつ、落ちた手や足のわずかな先着を見極める眼力。その瞬間を裁く軍配の美しさは、長年の鍛錬によって研ぎ澄まされた職人技の結晶である。土俵の伝統と権威は、こうした行司たちの無私の裁きによって守られ続けている。