地元に根付いていた人気店がなぜ暖簾を下ろすことになったのか。ネット上や地域住民の間では「街の治安変化による立ち退きではないか」「新興チャイナ系資本に買収されたのか」など、真偽不明の噂が飛び交いました。しかし、商業登記データや地域の飲食店関係者への取材を照合すると、実態はより構造的な問題に起因していたことが浮き彫りになります。
最大の要因とされているのが、調理人の高齢化と深刻な後継者不足です。昭和から平成中期にかけて個人や親族経営で切り盛りしてきた中華料理店は、過酷な厨房作業と長時間の仕込みを伴います。事業承継がスムーズにいかなかった町中華が全国的に一斉閉店を迎えた時期と重なり、石亭もまた同様の岐路に立たされていました。
さらに、店舗が入居していた建物の老朽化と耐震基準の問題が重なりました。大規模な設備改修や耐震補強には莫大なコストがかかる一方、2000年代半ばから埼玉県警による大規模な環境浄化作戦が展開され、深夜の歓楽街需要そのものが縮小していきました。深夜客をメインターゲットの一つとしていた飲食店にとって売上の構造転換は難しく、無理に借入をして店舗を継続するよりも、一定の節目として勇退を選択したというのが真相といえます。