ジブリ作品には数多くの魅力的な男性キャラクターが登場しますが、その中でもバロンは「理想の紳士」「初恋泥棒」と評される特別な立ち位置を築いています。猫の恩返しのバロンがかっこいい理由として挙げられるのは、ビジュアルの端麗さだけではありません。窮地に陥ったハルを救い出す卓越したステッキ術や剣技の腕前、相手に決して媚びない自立した精神性、そして何より他者の尊厳を重んじる揺るぎない優しさにあります。
特に視聴者の心を強く打つのが、作中で語られる洗練されたバロンの名言・セリフです。
猫の国へ連れ去られ、自分らしさを見失いそうになるハルに対して放った「いつも自分を見失わずに、自分の時間を生きるんだ」という言葉は、物語の核心を突く珠玉のメッセージです。他人に流されやすい日常を送っていた女子高生ハルの背中を押し、精神的な自立へと導くこのセリフは、現代を生きる鑑賞者の胸にも深く突き刺さります。
さらに、猫の国の迷宮から脱出する際に見せる機転や、崩れ落ちる塔から落下するハルを抱き止める空中シーンなど、一挙手一投足に無駄のないアクションも圧巻です。去り際に残す「もしハルが本当に私たちを必要としたなら、猫の事務所の扉はまた開くだろう」という別れの言葉に至るまで、徹底して相手の自立を尊重する大人の包容力が、観る者を魅了してやまない最大の要因となっています。