医療現場で風邪症状に対して抗生物質が処方されるのは、決して医師の気まぐれではなく、明確な臨床的根拠(エビデンス)が存在する場合に限られます。具体的には以下のようなケースです。
1. 検査で特定の細菌感染症が確定した場合
喉の激痛、発熱、首のリンパ節の腫れがあり、鼻水や咳があまり出ない場合、医療機関で迅速抗原検査を実施します。ここで溶連菌感染症(A群溶連菌)と診断された場合は、急性糸球体腎炎やリウマチ熱といった重篤な後遺症・合併症を防ぐため、ペニシリン系などの抗生物質を通常10日間程度しっかり服用します。
また、若年層を中心に長引く激しい咳が特徴のマイコプラズマ肺炎が疑われる場合も、細胞壁を持たない菌の性質に合致したマクロライド系やテトラサイクリン系などの抗菌薬が選択されます。
2. ウイルス感染から「細菌性二次感染」へ移行した場合
風邪のウイルスによって気道粘膜が荒らされると、免疫バリア機能が低下し、普段は大人しい常在菌が暴れ出す「二次感染」を起こすことがあります。以下のような兆候が現れた場合、医師は細菌感染を疑い抗生物質の投与を検討します。
- 風邪をひいてから7〜10日以上経過しても症状が改善せず、むしろ悪化傾向にある
- 一度下がった熱が再び38度以上の高熱となってぶり返した
- 鼻水や痰がサラサラした透明・白色から、ドロッとした濃い黄緑色に変化し、強い異臭や頬・目の奥の痛みを伴う(細菌性副鼻腔炎の疑い)
- 激しい咳とともに黄色い痰が大量に出て、息苦しさや胸の痛みがある(細菌性気管支炎・肺炎の疑い)