『思い出の渚』を聴く者の脳裏に浮かぶのは、夕暮れに染まる水平線と、もう二度と戻らないひと夏の恋の情景です。作詞を手掛けたのは、サイドギターの鳥塚しげきでした。加瀬が書き上げた瑞々しいメロディテープを渡された鳥塚は、自らの青春の記憶と誰もが抱くノスタルジーを、わずか数行の無駄のない言葉へと凝縮させました。
この歌詞の明確なモデル地域・ロケ地として知られるのが、加瀬や加山がこよなく愛した神奈川県・湘南エリア(茅ヶ崎から葉山にかけての相模湾沿岸)です。慶應義塾大学出身の加瀬をはじめ、メンバーたちにとって湘南は日常の延長にあるプレイスポットであり、サーフィンやヨットカルチャーが息づく特別な場所でした。
「君を見つけた この渚に」というフレーズに込められているのは、単なる失恋の哀傷にとどまらず、過ぎ去った季節への感謝と透明感ある叙情詩です。当時激しかった「GSは不良の音楽」という社会的偏見を、彼らの育ちの良さと湘南の爽快な風景描写が見事に打ち破り、老若男女に愛される国民的ヒットへと押し上げました。