夢二の美意識と波瀾の生涯は、後世の映像作家たちをも魅了してやまない。その筆頭と言えるのが、異才・鈴木清順監督による映画『夢二』(1991年公開)だ。「大正浪漫三部作」の完結編として制作された本作は、夢二の心象風景を幻想的に描き出した映像美の傑作として知られている。
沢田研二が演じる竹久夢二は、生と死、愛と狂気の狭間を漂う美しき放浪者だ。リアリズムを排し、色鮮やかな色彩と意表を突くカメラワークで構成された映像は、まさに夢二の描いた水彩画や版画がそのまま動き出したかのような錯覚を抱かせる。
劇中で描かれる女たちとの官能的で妖しいやり取りは、実話の伝記映画という枠組みを超え、詩人・夢二の脳内世界を覗き込んでいるかのような感覚に陥らせてくれる。アート好きなら一度は観ておくべき映像体験だ。