世界的な大ヒットを記録したNetflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』。荒廃した渋谷を舞台に繰り広げられる過酷なサバイバルを描いた本作で、監督の佐藤信介とともにビジュアルの根幹を作り上げたのが谷査恵子だ。SFアクションというジャンルにおいては、時に現実離れしたデザインが作品の没入感を削いでしまうリスクがある。しかし、彼女の手掛けた衣装は違っていた。
汗に濡れたアロハシャツ、破れたTシャツ、戦いの中で刻まれる擦り傷や汚れ。キャラクターごとの個性を一目で伝えるシルエットを保ちつつ、極限状態に置かれた人間のリアリティを服飾で克明に描き出した。世界中の視聴者が画面から目を離せなくなった背景には、異世界の奇抜さと日常の延長線上にある生々しさを絶妙なバランスで融合させた、彼女の鋭い審美眼が存在する。