なぜ警察官と消防士の礼服は、これほどまでにデザインの根幹が共通しているのだろうか。その理由は、日本の近代行政機構が歩んできた歴史的経緯と、「公共安全」という共通のミッションに帰着する。
明治時代に日本の近代警察制度が発足した際、消防組織は警視庁の管轄下(警視庁消防本部)に置かれていた。つまり、歴史の長きにわたる歩みの中で警察と消防は同じ組織として発展してきた背景がある。戦後の警察機構改革によって消防は自治体消防として独立を果たしたが、組織としての厳格な階級制や、式典で着用する正装の仕立て(ダブルブレストのジャケット、金ボタン、飾緒の採用など)には共通の伝統が受け継がれた。
国民の生命と財産を災害や犯罪から守るという重厚な使命。その意思を表徴するデザインとして、機能美と威厳を兼ね備えた現在のスタイルが定着したのである。