樹木希林の語り草といえば、伝説的ロックミュージシャンである夫・内田裕也との独特な夫婦関係だ。別居生活を長く続けた二人だったが、この自宅キッチンには、彼がふらりと訪れた際に使われた特別な器や鍋が大切に保管されていた。
親しい知人の証言によれば、内田が自ら台所に立つことは稀だったものの、彼が好きだったシンプルな煮物や汁物を振る舞うため、彼女は手際よくコンロに火を点けたという。互いに干渉しすぎず、しかし深い根底で繋がっていた二人の絆。殺風景に見えるほど磨き上げられたステンレスのシンクには、互いの孤独と愛情を受け止めてきた家庭の日常が静かに刻まれていた。