日常の診療で圧倒的な頻度で遭遇するのが外耳炎だ。耳の穴の入り口から鼓膜までの通り道が炎症を起こす疾患であり、湿度の上昇やアレルギー、水分の侵入など些細なきっかけから爆発的に悪化する。
この外耳炎の主因として極めて厄介な存在がマラセチア皮膚炎である。マラセチアは健康な皮膚にも常在する酵母様真菌だが、皮脂の過剰分泌や湿潤環境が整うと爆発的な勢いで増殖を始める。独特の甘酸っぱい発酵臭、独特の油っぽい黄褐色の耳垢、そして耐え難い痒みが愛犬を襲う。放置された外耳炎は鼓膜を破り、中耳炎や内耳炎へと波及して平衡感覚を奪うリスクすら孕んでいる。