自動車購入の商談において、昭和・平成の時代から根強く語り継がれてきた都市伝説が「札束を積んで一括で払った方が大きな値引きを引き出せる」という俗説です。しかし、現代の自動車流通業界においてこれは完全に誤りです。
車一括払い値引きの真相を暴くと、実態は「ローンを組んでもらった方がディーラー側は値引きを出しやすい」構造になっています。ディーラーは系列信販会社からローン契約件数に応じた多額のバックマージン(金融手数料)を受け取っています。つまり、車両本体からの値引き限界に達していても、「ローンを組んでくれるなら、その手数料バックの一部をお客様の値引きやオプションサービスに回せる」という営業力学が働くのです。営業スタッフに「一括で払います」と告げた瞬間、営業インセンティブが消失して値引きの渋い提示を受けることも珍しくありません。
さらに注意が必要なのが、近年の新車販売で主流を占める残価設定ローン落とし穴です。残価設定型クレジット(残クレ)は、3年後や5年後の推定下取り額(残価)を据え置き、残りの金額だけを分割返済するため、月々の支払いを極限まで安く見せかけることができます。しかし、ここには巧妙な仕組みが存在します。利用者が毎月支払っている利息は、「分割して返済している部分」だけでなく、「最終回に据え置かれた残価部分」にも全期間にわたって満額で計算されているという点です。
加えて、残価設定ローンには走行距離制限(月間1,000km〜1,500km程度)が設定されており、規定を超過すると1kmあたり数円〜数十円のペナルティが加算されます。万が一の事故で修復歴が付いた場合、返却時に数十万円単位の清算金を一括請求されるトラブルも後を絶ちません。「月々の支払いが安いから」という理由だけで残価設定に飛びつくのは、極めてリスクの高い行為と言わざるを得ません。