もちろん、『進撃の巨人』が世界的ヒットを記録したのは、単なるアイデアの借用ではなく、少年漫画としての圧倒的な再構築があったからです。両作の違いを比較すると、諫山氏の卓越した翻訳能力が際立ちます。
『マブラヴ』では、人類は巨大ロボット兵器「戦術機」を駆使してBETAの物量作戦に対抗します。対して『進撃の巨人』は、科学技術が中世レベルにとどまる世界観を設定し、ワイヤーとガス圧で空中を自在に駆け巡る「立体機動装置」を生み出しました。巨大兵器に乗って戦うのではなく、生身の人間が刃一本で巨大な肉体に肉薄するアクションへと変換したことで、読者にダイレクトなスリルと痛覚を伝えることに成功したのです。
さらに、物語後半で描かれたエルディア人とマーレ人の歴史的対立や民族差別といったポリティカルな社会構造は、単なる怪物との生存競争を超えた重厚な人間ドラマへと作品を押し上げました。元ネタへの敬意を払いつつ、完全にオリジナルの強度を持つ世界へと昇華させた点こそが評価されるべきポイントです。