文化を経済や社会格差の視点から鋭く分析したのが、フランスの社会学者ピエール・ブルデューだ。彼は、貨幣や不動産のような経済的資産だけでなく、家庭環境や教育を通じて身につく知識、教養、感性、価値観などを「文化資本」と名付けた。この資本は一見すると個人の才能や嗜好のように見えながら、実際には階層間で静かに継承され、社会的格差を固定化させる要因として作用する。
現代ビジネスにおいて、この「文化資本」の概念は極めて重い意味を持つ。多様な背景を持つ人材を活かすダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進にあたり、特定の文化資本を持つ者だけが有利になる組織構造を見直す動きが広がっているためだ。消費者の文化資本の違いを理解し、多様な感性に響くプロダクトを設計できるかどうかが、グローバル市場で企業が生き残るための必須条件となっている。