グラビアアイドルとして頂点を極めた彼女でしたが、20代半ばを迎える頃、キャリアの方向性を根本から揺るがす大きな転換期が訪れます。ファンや業界関係者を驚愕させたのが、2010年公開の佐藤寛子の映画出演作における金字塔、石井隆監督の『ヌードの夜 / 愛は惜しみなく奪う』への主演でした。
従来の「明るいグラビアクイーン」のパブリックイメージを粉々に打ち破るかのように、スクリーン上で竹中直人ら実力派俳優を相手に体当たりの濡れ場と完全フルヌードを披露。同時期に発売された佐藤寛子の写真集やメイキング作品でも、それまでの清純な水着グラビアとは一線を画す、人間の生々しい情念や孤独をむき出しにした過激なビジュアルが展開されました。
なぜ彼女はここまでの過激路線へ舵を切ったのか。当時の劇場パンフレットやインタビュー記事で本人が語った言葉からは、単なる話題作りではなく、「消費されるだけのアイドル」から脱却し、「魂を削る本物の表現者」へ生まれ変わろうとする強烈なプロ意識と切迫感が伝わってきます。しかし同時に、この過激な表現の背景には、後述する家庭内の深刻な経済的逼迫が影を落としていたことも、後に明かされることになります。