「発色剤は体に悪い」という言説の根拠として頻繁に挙げられるのが、発色剤の危険性と発色剤の発がん性に関する情報です。具体的に何が懸念され、科学界ではどのように評価されているのでしょうか。
ハムやソーセージなどの加工肉に広く使われる代表的な発色剤は亜硝酸ナトリウムです。この成分単体が通常の使用量で直接的な毒性を発揮するわけではありません。問題視されているのは、肉に含まれるアミン類(タンパク質の分解物)と亜硝酸塩が酸性の胃の中で反応した際に微量生成されるニトロソアミンという物質です。ニトロソアミンは国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類において、人に対して発がん性があるとされるグループに属しています。
世界保健機関(WHO)の外部組織であるIARCが2015年に「加工肉の過剰摂取が大腸がんリスクを高める」と発表して以来、世界中で不安が拡大しました。公の記者会見でも加工肉の摂取量が1日50グラム増えるごとに結腸直腸がんのリスクが18%増加すると示され、日本国内でも大きな波紋を呼びました。
内閣府食品安全委員会や厚生労働省が公表している摂取実態調査によると、日本人の平均的な加工肉摂取量は1日あたり約13グラムにとどまります。欧米諸国の平均(1日約50〜100グラム以上)と比較すると大幅に少なく、日本の日常的な食生活においてニトロソアミンによる発がんリスクが跳ね上がる状況とは言えません。
加工食品の製造現場では、ニトロソアミンの生成を抑制する目的でビタミンC(アスコルビン酸ナトリウム)などが同時に添加されています。ビタミンCが共存する場合、亜硝酸塩とアミンの結合が阻害され、ニトロソアミンの生成が大幅に抑制されることが実験で実証されています。