「最低だ俺って」の場面を正しく読み解くには、碇シンジとアスカの複雑な関係性が欠かせません。ふたりは互いに似た孤独を抱えながらも、プライドと恐怖心ゆえに素直に向き合えない関係を続けてきました。
シンジにとってアスカは、自分を罵倒しながらも「自分を男として意識してくれる特別な他者」でした。しかし、アスカが精神汚染を受けて戦意喪失し、廃人同様になってしまったことで、シンジの心の拠り所は完全に崩壊します。病室での行為は、アスカを一人の人間として尊重したものではなく、自己の精神的空白を埋めるための「都合のいい対象」として扱ってしまったことを意味します。
この一方通行のコミュニケーションは、旧劇場版のラストシーンである「赤い砂浜での首絞め」と「気持ち悪い」というアスカのセリフへと直接繋がっていきます。互いに傷つけ合うことしかできない2人の歪な距離感が、冒頭の病室シーンで残酷なまでに提示されていたといえます。