福井県が「幸福度ランキング日本一」の常連である背景には、単なる住みやすさだけでなく、地域に根づく製造業の強さがあります。その筆頭が鯖江メガネフレームです。経済産業省の工業統計調査を紐解くと、福井県内の眼鏡枠出荷額は全国の9割以上を独占。明治時代、農閑期の副業として始まった歴史が、1980年代の世界初となる「純チタン製メガネフレーム」の開発成功を経て、ハイエンド市場を牽引するグローバル産地へと発展しました。
また、若狭湾を臨む小浜市で生産される若狭塗箸も、国内の塗り箸シェアの約80%を占めています。海底の様子を図案化し、貝殻や卵殻、金箔・銀箔を漆の中に塗り込み、研ぎ出す技法は「若狭塗」ならではの至芸です。日用品でありながら、何十もの工程を職人の手作業によって丹念に重ねることで、驚くべき堅牢さと雅やかな光沢が生み出されています。
さらに、越前市で受け継がれる越前和紙は、約1500年の歴史を持つ伝統工芸の極致です。かつて日本初の紙幣用紙を手がけた実績を持ち、その耐久性と優美な肌理(きめ)は、ピカソやレンブラントの版画用紙としても採用されてきました。現在では高級ホテルやラグジュアリーブランドの内装材、現代アートの支持体としても再評価され、工芸の枠を超えたマテリアルとして国内外から熱烈なオファーが届いています。