読者の心を締め付け、考察コミュニティを最も賑わせているテーマが、『夜明けの唄』の呪いの真相です。なぜエルヴァは夜の海から現れる化物(オビト)と独りで戦わねばならず、なぜ戦うたびに身体が黒く侵食されて命を落とさなければならないのか。物語が進むにつれ、この「神聖な儀礼」とされてきたシステムの裏に潜む、おぞましい真実が浮き彫りになってきました。
島を守るための神聖な役目と教え込まれてきた覡の歴史。しかし作中で提示される数々の伏線は、それが領主や上位権力者による「人為的な生贄搾取システム」であることを強く示唆しています。オビトの発生源、過去に命を落とした歴代の覡たちの遺体の処遇、そしてエルヴァの身体に触れることで黒い痣を薄れさせるアルトの特異な体質――これらは偶然の奇跡ではなく、島の成り立ちそのものに深く根ざした因果関係です。
エルヴァ自身が「自分は化け物になって死んでいく」と諦観していた呪いは、実は彼個人の欠陥ではなく、島が抱え込んだ業の転嫁に過ぎませんでした。アルトの存在によって呪いの侵食が食い止められた事実は、絶対的と信じられていた絶望のルールに風穴を開け、物語は宿命の破壊へと舵を切ることになります。