業界の内部関係者が口を揃えて「もはや別の職業だ」と吐き捨てるのが、スーパーゼネコン社員とアトリエ系を含む独立設計事務所スタッフとの間に横たわる金銭的断絶である。新卒入社から定年までの生涯年収を推計すると、その差は1億円から1億5000万円近くまで広がる。同じ試験をパスし、同じ資格証書を国土交通省から交付されたプロフェッショナルでありながら、これほどの格差が生じる理由はシンプルだ。ゼネコンが「工事請負の利ざや」を吸い上げる巨大マネービジネスであるのに対し、独立設計事務所は「設計監理料」という限られたパイを取り合う労働集約型の構造から抜け出せないためである。
独立事務所の所長クラスであっても、下請け案件が中心であれば年収500万円前後で頭打ちになるケースは珍しくない。対照的に、元請けとしてメガプロジェクトを統括する大手ゼネコンの現場担当者は、30代前半で年収800万円台、管理職に昇格すれば30代後半で1000万円の大台へ軽々と到達する。「建物をデザインしたい」という純粋な情熱を抱いて独立系を選んだ若手が、数年後に同級生のゼネコン組の給与明細を見て愕然とし、業界を去っていく悲劇は後を絶たない。