歌舞伎町が現在の姿に至る背景には、過去に起きた凄惨な事件と、それを受けた治安機関の強力な反動の歴史がある。1990年代から2000年代初頭にかけては、住吉会と中国マフィア・台湾マフィアが衝突した「パリジェンヌ事件」をはじめ、白昼の喫茶店や雑居ビル内での発砲・刺殺事件が頻発した。暴力団同士のみならず外国人犯罪組織との間で領袖争いが激化し、当時の歌舞伎町は文字通り「治外法権の危険地帯」と化していた。
この無法状態を打破する契機となったのが、2001年の「歌舞伎町ビル火災(死者44名)」および石原慎太郎都知事(当時)のもとで敢行された「歌舞伎町浄化作戦」だ。警視庁による防犯カメラの街頭大量設置、風営適正化法の厳格運用、パトロールの常時化によって、目に見える違法店舗や外国人マフィアの拠点は徹底的に排除された。
近年の情勢に目を向けると、2020年に起きた大規模な「スカウト狩り事件」が裏社会に走った激震として記憶に新しい。住吉会幸平一家傘下の組員らが、街の掟を破って無断営業を続けた大手スカウトグループ「ナチュラル」の幹部らを白昼の歌舞伎町で集団捜索・襲撃した事件である。この一件は「ヤクザの統制が効かなくなった」と言われていた街において、依然として暴力団が秩序の頂点に君臨している現実を世に見せつける結果となった。2024年から2026年にかけては、悪質ホストクラブへの立ち入り捜索や風俗スカウトへの組織犯罪処罰法適用など、行政と警察による新たな包囲網が次々と敷かれ、治安を巡る攻防は新たな局面を迎えている。