高級パティスリーが仕立てるモンブランやテリーヌが舌の上でねっとりととろけ、圧倒的な余韻を残す最大の秘密は、生栗に含まれるデンプンの糖化プロセスに隠されています。製菓科学の検証データによると、栗の主成分であるデンプンはアミラーゼという酵素の働きにより、60℃から70℃の温度帯で最も効率よく糖へと分解されます。沸騰した熱湯(100℃)で一気に強火加熱してしまうと、酵素が失活して甘みが十分に引き出されず、粉っぽくボソボソとした仕上がりになってしまうのです。
まずは仕上がりを劇的に変える生栗下処理方法の基礎を押さえましょう。収穫直後の新鮮な栗は、調理前にビニール袋へ入れてチルド室(0〜1℃)で1〜2週間ほど寝かせると、自己防衛反応によって糖度が最大2〜3倍近くまで上昇することが農業試験場などの研究で実証されています。このひと手間で、後から加える砂糖の量を抑えつつ、栗本来の力強いコクを引き出すことが可能になります。
そして誰もが頭を抱えるのが硬い殻の処理ですが、力任せに包丁を入れる必要はありません。話題を集める栗の鬼皮渋皮剥き方裏ワザとして最も推奨されるのが「熱湯放置法」と「冷凍ショック法」です。
【熱湯放置法】ボウルに生栗を入れ、沸騰した湯を注いで蓋をし、冷めるまで30分〜1時間放置します。水分を含んで鬼皮が柔らかくなり、底部の座(ざ)と呼ばれるザラザラした部分から包丁の刃先を引っ掛けるだけで、指先で驚くほどツルリと剥くことができます。
【冷凍ショック法(渋皮ごと剥く場合)】生栗を一晩冷凍庫で凍らせた後、熱湯に5分ほど浸けます。温度差による膨張率の違いで鬼皮と実の間に隙間が生まれ、包丁の刃を入れると鬼皮・渋皮が一気に剥離しやすくなります。用途が「甘露煮」や「ペースト」であれば冷凍ショック法、「渋皮煮」にするなら渋皮を傷つけない熱湯放置法を選ぶのが鉄則です。