彼の仕掛けは目だけに留まらない。耳で聴いたときの圧倒的なリズム感とライミング。これこそが中毒性の源泉だ。『化物語』の阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎによるテンポの良い掛け合いを思い出してほしい。軽妙でいてどこか歪んだセッションは、まるで極上のジャズやヒップホップを聴いているかのような快感を脳にもたらす。
上から読んでも下から読んでも成立する複雑な長文回文。キャラクター名に潜ませたアナグラム。同じ音を執拗に繰り返す脚韻。西尾維新は日本語の音韻構造を完璧に把握しており、人間の耳がもっとも心地よいと感じる周波数を正確に突いてくる。「声に出して読みたい」という生理的な欲望を刺激されるのは、必然なのだ。