この作品の最も天才的な発明は、実在した文豪の人生や作品を「異能力」として昇華させた点だ。例えば、太宰治の「人間失格」や中島敦の「月下獣」。これらは単なる超能力の名前ではない。実際の文豪たちが抱えていた苦悩や、彼らの文学世界そのものが能力の性質に反映されている。
文学史を知っている人なら思わずニヤリとしてしまう小ネタが、作中の至る所に散りばめられている。一方で、文学に詳しくない層にとっても、その設定の奥深さがキャラクターへの興味を引くトリガーになっている。キャラクターを入り口にして、図書館で実際の文豪の小説を手に取る若者が後を絶たないという現象も、この作品ならではの幸福な影響と言えるだろう。