「簿記1級を独学で取れたから、会計士も市販テキストでいけるのではないか」——。そう考える初学者が毎年一定数存在しますが、結論から言えば公認会計士試験の完全独学は無謀と言わざるを得ません。その背景には、試験制度の構造的な要因が横たわっています。
第1の関門である短答式試験は、マークシート方式でありながら相対評価の色彩が極めて強く、合格ボーダーは実施回によって約68〜73%前後を推移します。受験生の多くが大手予備校の答練を何巡も解き込んで本番に臨むため、「予備校生が全員正解する基本論点」を1問でも落とせば即座に脱落する過酷な椅子取りゲームです。市販の教材だけでは、最新の出題トレンドや捨て問の判断基準をリアルタイムで追うことが不可能です。
さらに高い壁となるのが、短答突破者のみが挑む論文式試験です。論文式試験の最終合格率は約35%前後と一見高く見えますが、これは厳しい短答式を勝ち抜いた精鋭の中での競争を意味します。採点基準は非公開であり、独自の論述作法や配点箇所を意識した答案作成技術が求められます。プロの講師による継続的な答案添削を受けずに、独学で合格水準の記述力を養うことは論理的に極めて困難です。