Googleマップやグルメサイトのレビューを検索すると、元祖長浜屋に対して「味が薄くてお湯みたい」「豚骨のコクがない」「まずい」といった辛辣な口コミが目に入ることがあります。一風堂や一蘭などに代表される、乳化してクリーミーな濃厚豚骨スープを想像して来店した観光客ほど、強烈なカルチャーショックを受ける傾向が見られます。
しかし、この「薄さ」こそが長浜ラーメンのアイデンティティであり、計算された構造です。
もともと魚市場の男たちが毎日、場合によっては1日複数回食べることを想定して作られたスープは、背脂を乳化させずに豚骨を煮出した「シャバ系清湯寄り豚骨」です。胃もたれせず、朝からでもスルスルと飲める軽快さを目指して設計されています。
さらに、ガンソのチャーシュー(通称:肉)は意図的に非常に塩辛く味付けされています。この肉から染み出す塩分と、卓上のタレ、そして麺から溶け出す打ち粉の風味が合わさることで、食べ進めるうちに味が完成するグラデーション構造になっているのです。最初のスープの一口目だけを飲んで「薄い」と判断してしまうと、この店の真価を見誤ることになります。
また、巨大な羽釜で常にスープを炊き続けているため、時間帯や仕込みのタイミングによって濃度や豚骨感が変動する「上ブレ・下ブレ」が存在するのも事実です。常連たちはその日のブレすらも風情として楽しみ、「今日のスープは若いな」「昼過ぎの出汁は濃いめだな」と語り合います。チェーン店の均一化された味とは対極にある、生きた現場の味なのです。