永徳の代名詞とも言えるのが、三の丸尚蔵館が所蔵し、東京国立博物館などの特別展でも異彩を放つ国宝『唐獅子図屏風』だ。高さ約2.2メートル、幅4.5メートルを超えるこの大画面に躍動する2頭の獅子は、圧倒的な威厳と生命感にあふれている。
近年の最新研究では、光学分析や高解像度デジタル解析によって、永徳の極めて大胆かつ緻密な下絵の痕跡が明瞭になった。迷いのない太い筆線と、力強い墨の濃淡、そして贅沢に使われた金箔の層構造が明かされたのだ。また、右側の獅子と左側の背景で筆致のタッチにわずかな違いが見られることから、永徳が下絵を描き、工房の弟子たちが共同で仕上げた画期的な制作スタイルの実態も科学的に裏付けられつつある。
力強い大線描と呼ばれるこの技法は、遠くから見ても一目で人を圧倒する視覚効果を狙ったものだ。桃山美術の豪壮華麗さを象徴するこの作品は、覇者たちの威光を示す最高峰のメディア空間でもあった。