桜井幸子の足跡を振り返る際、脚本家・野島伸司との邂逅を外して語ることはできません。1988年にサンミュージックのオーディションで芸能界入りを果たし、翌年には連続テレビ小説『おんなは度胸』のヒロインに抜擢されるなど、着実に実力派女優への階段を上っていた彼女の運命を決定づけたのが、1993年放送のTBS系ドラマ『高校教師』でした。
真田広之演じる生物教師と、桜井幸子演じる複雑な家庭環境を抱える女子高生。禁断の愛や近親相姦というタブーに切り込んだ同作は、最高視聴率33.0%を記録する社会現象となりました。桜井幸子が見せた、脆さと狂気を孕んだ純真無垢な佇まいは、当時の視聴者に強烈な爪痕を残しました。
その後も『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(1994年)、『未成年』(1995年)と、野島伸司が手掛ける重厚な群像劇に立て続けに出演。「野島作品のミューズ」としての地位を確立し、清純派でありながら人間の内面に潜む深い孤独を体現できる唯一無二の女優として、平成テレビ史にその名を深く刻み込みました。